Sunday, April 09, 2006

酔っ払ってくれ、コーラン

イスラームは飲酒を禁じている。しかし飲む奴は飲む。アフガンに行った時、カブールで友人の誕生日を祝う機会があった。男だけが集まって、ビールを飲み始めた。ハイネケンの空き缶が散らばり始め、次第に強い酒も飲む。その酒は外国のパスポートを持っている者なら、ISAFの基地にある売店で手に入れることができる。

場も盛り上がった頃、酔って、ある男が暴れ始めた。その場のリーダー格の男だ。男は酒瓶片手に、何かを必死で叫んでいた。仲間に取り抑えられた。男の顔は幸せには見えなかった。男は険しい顔で何かを睨んでいた。何を?

なぜ人は飲まずにはいられないのか?かくいう俺もアルコール中毒だった時もある。無茶苦茶な飲み方をした。吐くまで飲んだ。吐くために飲んだ。独りで。とことん記憶を失うために。そうやって実は自分を忘れるために。

オーストラリアで、とある夫婦の家に泊まった。クリスマス、年越しを過ごした。俺たちは毎日飲んでいた。ある晩、女がシャンパンを飲みすぎた。俺は階下のベッドで寝ていたが、階上では口論が始まった。女が夫を口汚く罵っている。同じセリフを何回も叫ぶ。同じ汚いセリフを何回も何回も。夫が反論するたびに。夫はラジオの広告会社を経営する金持ちだが、この夫婦は幸せには見えなかった。この女にはときに眠れない夜がある。

あの男にも、あの女にも、きっと忘れたいことがあるに違いない。そして、いつも忘れることに失敗している。

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